卓球女子、福原愛・石川佳純・平野早矢香をメダリストに育てた監督の「戦略思考」 〜本『勝利はすべて、ミッションから始まる。 』

日本女子卓球、福原愛選手、石川佳純選手、平野早矢香選手らのこの感動の表情。素敵ですね。
彼女たちをメダリストにした知将、村上監督の本が2012/11/17発売されました。
『勝利はすべて、ミッションから始まる。 』です。
メンバーとの信頼関係を構築し、「メダルをとる」というミッションから逆算して戦略を立てる。
そしてそれをメンバーに浸透させ、自ら考えて行動する人間をつくる。
これはビジネスの世界でも、そのまま真似したい内容です。
今日は本書から、福原愛・石川佳純・平野早矢香をメダリストに育てた監督の「戦略思考」の6つのポイントを紹介します。
1. 標語をつくる
具体的に敵をイメージさせることは、戦略に意識を集中することでもあります。僕は一つの標語をつくった。
「4T12」である。
4つのチーム(Team)の12名の選手、という意味だ。
(中略)
僕は、標語をつくるのが好きだ。
なぜなら、チームの頭にスッと入る言葉で語りかけなければ、戦略は浸透しないからだ。単に「上位の選手たちに勝て」というのでは、敵を明確にイメージできない。漠然としたイメージでは、選手たちの記憶に残らず、意識を根本から変えることはできない。P.91
的はずれなことを「がんばって」いても、ムダな努力になってしまいますよね。
戦略や考え方などにネーミングすることは、ぜひ真似しましょう。
トヨタの「カイゼン」などもその一例ですね。意識しやすくなります。
2. データは「答え」ではなく「ヒント」
試合を控えた時期には、データは「勝つためのヒント」として活用する。「答え」ではなく「ヒント」である。
P.107
前うまくいったから、今回も同じ方法で。世界では、一度勝った戦術は二度と通用しないのだ。
(中略)
データを鵜呑みにして、一度勝った戦術を使い続けるのは何も考えていない証拠である。データを成功体験としてインプットしたときに、すでに「負け」は始まっているのだ。P.110
そう考えることは多いのではないでしょうか。
それが効率化につながり、ライフハックだ、という場合もあるでしょう。
ただ、それがいつまでもうまくいくとは限らないし、もっと良い方法があるかもしれません。
よりよい方法を探し続けることこそ、ライフハックの精神かな、とおもいます。
3. 指導内容は「相手」の中にある
相手の話を聞く。相手を見る。指導すべきことは、「リーダーの頭」のなかにあるわけではない。リーダーの考えを押し付けても、選手は困惑するだけだ。
まず何よりも、相手を「知る」ことが大切だ。
それが、指導の原点にあるのだ。P.134
そこから、指導すべき内容が見えてくるのですね。
リーダーは、マニュアル通り、誰にでも同じ指導内容・方法というわけにはいかないということ。
4. リーダーは問題解決のために「行動」する
「聞く」だけでも相手はかなり楽になるでしょう。僕は監督として、一つ心がけていることがある。
それは、選手から相談を受けたとき、必ず問題解決に向けて行動することだ。
(中略)
相談してくる時点で、相手は僕だったら解決できるかもしれないと思っているのだから、その気持ちに応えて、最善を尽くさなければならない。P.141
加えて、実際に解決のために「行動」すれば、信頼関係の構築につながりますね。
そしてますます相手は相談しやすくなる。
相談してくれれば、指導内容が見えてくる。
それが、結果につながる。
5. リーダーがリスクを負って、チャンスを与える
監督は、「カットを攻略すれば韓国に勝てる」そう4年間、選手に言い続けたそうです。負けた選手には、具体的な「課題」と「目標」を示して、その「目標」を達成するための「環境」を用意する。
そして、チャンスを与える。もしかすると、失敗するかもしれない。負ければ、すべての責任はオーダーを組んだ監督にある。しかし、挑戦させなければ、いつまでも「課題」を克服することはできない。そのリスクをリーダーは背負わなければならないのだ。
チャンスをものにした選手は見違えるようになる。「やればできる」という自信をつかみとるからだ。P157
そして、ときには難しい試合にも育てたい選手を起用しました。
これを繰り返し、ついに結果を出したとき、自信につながるのですね。
できることを任せておくのが安心なわけですが、それでは相手が育ちません。
リーダーには任せる覚悟が必要です。
6. 細かいアドバイスや命令をしない
ロンドンオリンピック、石川選手が接戦の中、タイムアウトをとりました。なぜ、「教えない」ことが選手を強くするのか。
それは選手が自分の頭で考えるようになるからだ。自分の頭で考え、自ら積極的に学び取ろうとする人間を育てるからだ。
(中略)
命令に従うことを繰り返すうち、やがてその選手は思考停止に陥る。P.168
「どんなサービスがいいですか」と聞かれた監督は、「長いのがいいんじゃないかな、バックに」と答えます。
ところがコートに戻った石川選手は、監督のアドバイスとは真逆のサービスをし、みごと点をとりました。
そしてこれがきっかけで、そのゲームをものにしたのだそうです。
のちに石川選手はこう言っています。
監督の言う通りにしても、点がとれたかもしれません。「監督は長いサービスを出せと言ったけど、相手の目を見たら、長いサービスを待っている気がしたんです。だから、小さいのを出しました」
P.171
しかし、それでも、自分で考えて行動した納得感が重要なのではないでしょうか。
自分で考えることの大切さ、また自分で考えられる人間を育てることの大切さがわかるエピソードです。
あのサンデル教授は、「対話」のなかで「考えさせる」プロですね。

まとめ

本『勝利はすべて、ミッションから始まる。 』。
勉強になることはもちろんなのですが、日本女子卓球のチームがメダルをとるまでの物語と、時々入っている写真に、ドキュメンタリーを見ているような感動を覚えます。
読み進めるとどんどんメンバーが成長していき、そして最後の写真…。
この本、オススメです。
著者(村上監督)は、ミッションを明確にし、その達成のためにメンバーが仕事をしやすい環境づくりをすることに徹しています。
それはつまりメンバーのサポートをするということ。
これはまさに、サーバント・リーダーシップの考え方ですね。こちらも要チェック。

次はどのレビューを読みますか?




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今日のひとこと
ロンドンオリンピック、卓球以外にも色々ありましたよね〜。
- [2012/11/26 12:00]
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