会社に使い捨てられないために必要な「武器」となる考え方 ~本『僕は君たちに武器を配りたい』

政治や会社に陰で文句を言っていても、事態が好転するとは思えません。日本がこのような経済的に厳しい状況に陥り、若者の未来に希望が感じられない世の中になったことをいつまでも嘆いていても仕方がない。それよりもなすべきことは、このような厳しい世の中でもしたたかに生き残り、自ら新しい「希望」を作り出すことである。
P.4
戦うために、わたしたちには何が必要なのか。その武器をくれるというのが本『僕は君たちに武器を配りたい 』です。
これからの生き方、ビジネスを考える上でぜひ読んでおきたい本書から今日は、会社に使い捨てられないために必要な「武器」となる考え方を見ていきましょう。
「コモディティ」ではなく「スペシャリティ」になる
なんの個性もない人は買い叩かれ、使い捨てられるということですね。一会社員、一研究者、一営業マン、一教師、といった具合に、同じような能力を持った人間であれば、今やっていることをほかの誰かと交換しても、代わり映えしない労働力になることが、個人のコモディティ化である。
決められた時間に出社して、決められた仕事を決められた手順で行い、あらかじめ予定していた成果を上げてくれる人、そういう人であれば、その中でいちばんコスト(給料)が安い人だけが求められるのが、現在のグローバル資本主義経済システムなのである。P.35
おそろしいことですが、まずはこのことをしっかり理解しておく必要があります。
そのうえで、どうすればコモディティの枠から抜け出せるのかを知り、考えていきましょう。
「投資家」の視点で「未来」を評価、リスクを取る
投資にかかわらず人生において、ハイリスク・ハイリターンの案件にチャレンジするということができている人は多くないのではないでしょうか。アメリカ人の投資家に「ダメな案件はひとつだけだ」という話をすると、「それはリスクをとらなすぎだ。もっとたくさんリスクをとりにいけ」と叱られる始末だ。
それはなぜか。投資という行為は、何よりも「分母」が大切だからだ。一つの案件にだけ投資するのは、カジノのルーレットで1カ所だけにチップを置くようなものなのだ。重要なのは、できるだけたくさん張ることなのである。
(中略)
トータルで成績を良くしたい、と思うならば、リスクを恐れずに積極的に投資機会を持たねばならない。失敗を怖がって、確実に儲かる案件にだけ投資することは、結果的に自分が得られたかもしれない大きな利益を遺失することにつながるのである。P.233
「投資家」の視点で、リスクが取れる範囲のハイリスク・ハイリターンの選択肢をたくさん選ばなければ、見える世界は今までと変わることはないでしょう。
また、投資と言えばこんな考え方が基本です。
これは人付き合いにも言えると著者は言います。投資は地面に死体が転がっているときに
P.85
今まさに旬の人や有名人に近寄っても、軽くあしらわれることも多いでしょう。
しかし逆に、苦しんでいるときに応援してくれた人のことを、人は決して忘れません。
すぐ思い出すのは島田紳助さんです。
彼は、人気の無くなった芸人や、まだ売れていないタレントを積極的にバックアップしていましたね。
ボクシングの亀田兄弟が大バッシングされ大変なときにも、彼らの味方をしていました。
「投資」なのか「情」なのかはわかりませんが、意図的な行為であると私は感じました。
「マーケター」視点で「差異」=「ストーリー」をつくる
自分自身や商品自体がコモディティだったとしても、それにストーリーを持たせることでスペシャリティとなることができます。全産業の「コモディティ化」が進む世の中で、唯一の富を生み出す時代のキーワードは、「差異」である。「差異」とは、デザインやブランドや会社や商品が持つ「ストーリー」と言いかえてもいい。わずかな「差異」がとてつもない違いを生む時代となったのだ。マーケターとは、「差異」=「ストーリー」を生み出し、あるいは発見して、最も適切な市場を選んで商品を売る戦略を考えられる人間だといえる。
P.129
どこで売るか、どのように売るか。
新しくない要素でもそれらを組み合わせて、共感を得られるストーリーにすることが大切であると言えます。
地味だったある人が、A部署→B部署を経てC部署に異動したとたん、その過去の経緯(ストーリー)を重宝がられて輝き出すこともあるでしょう。
「顧客」を再定義すれば、その人達のニーズを満たすためのスキルを自分が既に持っていることに気づくかもしれません。
「イノベーター」視点で「TTP」、「新結合」、「逆」を考える
イノベーターと言えば、スティーブ・ジョブズですね。
ジョブズのしてきたことを想像しながら以下を読むと、よく理解できます。
「TTP」、「新結合」、「逆」をクセのようにいつも考えていれば、他の人とは違う視点が身につくでしょう。既存のものを、今までとは違う組み合わせ方で提示すること。それがイノベーションの本質だ。
社会にインパクトを与える商品やサービスを生み出したい、と考えたとしても、まったく新しい製品を作る必要はないのである。
(中略)
特定分野の専門家になるよりも、いろいろな専門技術を知ってその組み合わせを考えられる人間になることのほうが大切なのである。
ほかの業界、ほかの国、ほかの時代に行われていることで「これは良い」というアイディアは「TTP(徹底的にパクる)」すれば良いのである。
イノベーションをある業界で起こすための発想術は、実はそれほど難しいことではない。その業界で「常識」とされていることを書き出し、ことごとくその反対のことを検討してみれば良い。P.183
まとめ

本書『僕は君たちに武器を配りたい 』は、とても多くの方に読まれているようですね。
上記にまとめたものを読めばお気づきの方も多いと思いますが、本書の主張自体は決して目新しいものではありません。
2006年の『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代 』にも既に
ということは書かれていますし、ではどうしたらよいかという点も、主張の根本は別の本に書かれているでしょう。「替えのきかない人材にならなければ、コンピュータや安い人材に仕事を奪われる」
ではなぜそれでも本書『僕武器』がウケるのか。
それは、著者が武器を持っているからです。
本書自体がまさに、コモディティにならないよう配慮されているのです。
投資家の視点で、あえて自己啓発本・ビジネス書慣れしていない学生・20代の若者を対象として書かれています(結果的には私のような30代にもウケているようです)。
そしてマーケター視点で、他とは違うストーリーをつくりだしています。
本書『僕は君たちに武器を配りたい 』と新書『武器としての決断思考』の2冊同時発売による著者デビューや、著者が京都大学で人気ナンバーワン授業の客員准教授・マッキンゼー出身でエンジェル投資家であること、さらに「この厳しい時代を生き抜くために、私があなたを助ける武器をあげましょう」と言うその本書のコンセプトも、まさにストーリーです。
さらにイノベーター視点で世の中の「逆」を考え、これまで三種の神器とされてきた「英語」「IT」「会計」や、ブームである「勉強本」や「朝活」「勉強会」は意味がないと斬り捨てています。
既存の情報をうまく「新結合」し、手垢のついていない新しい表現で伝えることにも成功しているでしょう。
このように自身の主張を本書でも実践しているので、これで売れなかったら面白かったのですが(笑)、実際に売れるという結果を出しているのはさすがです。
この記事だけでなくぜひ実際の本を手にとって、内容はもとより著者の「うまさ」を感じてみてください。
ちなみに本書には、
とありますが、本書自体も、昨今の勉強本ブームも福沢と同様に、ブームを作った「仕掛人」が「ビジネスのために」起こしたのである
(中略)
現代の勉強会ブームの「仕掛け人」たちは、「これからの知識社会では、学び続けなければ生き残れない」と世の中の人々を煽った。
(中略)
これは一種の「不安解消マーケティング」と呼ばれる手法である。P.22
っと不安を煽ったうえで、非情で残酷な日本社会を生き抜くための、「ゲリラ戦」のすすめである。
2011年現在、日本の経済は冷え切っており、そこから回復するきざしはどこにも見えない。P.1
と、しっかり「不安解消マーケティング」に成功しています(笑)。私が本書を執筆することにしたのは、こうした厳しくなる状況の中で、一人での多くの学生や若い人々に、この社会を生き抜くための「武器」を手渡したいと考えたからである。
P.4
著者の
という声が聞こえてきそうです。「読者のためにツッコミポイントをつくっておいたよ。でも受け身で思考停止してる読者じゃ気付かないよね」
次はどれを読みますか?




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今日の名言
『「トリクル理論」(Trickle Theory)と呼ばれる理論がある。これは、簡単な理論である。「少しずつ絶え間なく時間を投資していれば、思いがけない成果があげられる」というものだ』 本『Being Geek』 http://t.co/pHfLADNi #meigen
- [2011/12/29 18:24]
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